「お母さん、見てみて! こんなにおっきいのがとれたよ!」
「あらほんと。おいしそうなのが採れてよかったわね、キャリーナ」
「うん! 私、もっといっぱいとるんだ!」
ほんとかどうか解んない幻獣のご飯のお話はいったん置いておいて、僕たちはベニオウの実を採る事にしたんだ。
そんな中でも一番張り切ってるのはキャリーナ姉ちゃん。
あっちこっちと動き回って、おっきくておいしそうなベニオウの実を採っては、それをお母さんの所へ持って行って自慢してるんだよね。
「おっ、これなんかいいんじゃないか?」
「そうだね。ちゃんと全体が真っ赤になってるし、食べごろかも」
それにお兄ちゃんたちも、こんな事言い合いながら真っ赤になってるベニオウの実を見つけては採って行ってるみたい。
じゃあ僕はって言うと、
「レーア姉ちゃん、あれ採って」
「これ? でも、まだ真っ赤になってないわよ? それよりこっちの方がいいんじゃない?」
「ううん。今から食べるのはキャリーナ姉ちゃんとお母さんがいっぱい採ってくれてるでしょ? だから僕たちは、お土産に持って帰るのを採ろうかなって思ってるんだ」。
レーア姉ちゃんと一緒に、まだちゃんと熟していないベニオウの実を中心に採ってるんだよね。
だってこの木になってる実は魔力をいっぱい吸ってるからなのか、ちょっと触っただけでも皮が破れて中の甘いお汁が出てきそうなくらいパンパンなんだもん。
だからレーア姉ちゃんが言ってる赤くなった実は、街までなんて持って行けそうになかったんだ。
「あら、ルディーンはここで食べるだけじゃなくって、街まで持って帰るつもりなの?」
「うん! だってここのは街で売ってるのよりおっきくて甘いでしょ? それに魔力もいっぱい入ってるから体にいいらしいから、ロルフさんたちの持って行ってあげたら、きっと大喜びしてくれるって思うんだよね」
ロルフさんやバーリマンさんはお金持ちでしょ?
だから普通のベニオウの実だったら、きっといっぱい食べてると思うんだ。
でもここになってるのは普通のとは全然違うし、それに体にもいいって言うんだから持って行ってあげた方がいいって僕、思うんだよね。
だってロルフさんはもうお爺さんだもん。
元気になるって言うんだったら、いっぱい食べた方がいいんじゃないかなぁ? って思うからね。
「ロルフさんって、錬金術ギルドにいるお爺さんの事よね。そう言えばさっき、この実を食べると体にいいとか言ってたっけ? それなら持って行ってあげたら喜ばれるかも?」
「そうでしょ? だから僕、いっぱい持って行ってあげるんだ!」
と言うわけですぐに食べるのは他のみんなに任せて、僕とレーア姉ちゃんはまだ真っ赤になってないのを中心に採っていく。
そしてベニオウの実がちっちゃな山になりそうな位採れたころ、
「おいおい。そんなに採っても食べきれないだろう?」
お父さんがそう言って、そろそろ食べようよって言ってきたんだ。
「キャリーナ姉ちゃん、お水出すから、おてて出して」
「は〜い!」
キャリーナ姉ちゃんは僕たちと違って真っ赤になってるのばっかり採ってたでしょ?
だからその時に力を入れすぎで皮が破れたりして、おててがベニオウの汁でベッタベタになってるんだよね。
それに、ここに来るまでにも森の中を歩いていろんなとこを触ってるから、ベニオウの実を食べる前におててを一度洗わなきゃって思ったんだ。
と言うわけで、床の端っこまで行って一般魔法、ドリンクウォーターで出したお水をキャリーナ姉ちゃんのおててにジャバジャバ。
お姉ちゃんは冷たいねって言いながら、ごしごししておててを洗ったんだ。
「キャリーナの次は私ね」
そしたら、今度はレーア姉ちゃんが僕にそう言ってきたんだよ?
だから僕、お姉ちゃんも洗うの? って思ってそっちを見たんだけど、そしたらその後ろんはお兄ちゃんたちが並んでて、その上その後ろにはお父さんとお母さんも並んでたもんだからびっくりしちゃった。
でも洗わないよりは洗った方がいいよね? って事でみんなのおててにも水をジャバジャバかけてあげて、最後に僕もしっかりと洗ったんだ。
おててもきれいになったという事で、みんなして採ったばかりのベニオウの実を食べ始めたんだ。
でね、ちょっとの間はみんなしておいしいおいしいって食べてたんだけど、ここになってる実って普通のより甘いでしょ?
だからお父さんが、その味にちょっと飽きちゃったみたいなんだよね。
それに柔らかすぎて歯ごたえが無いからって、僕とレーア姉ちゃんがお土産用に採ったまだちょっと硬いベニオウの実を手に取って食べ始めちゃったんだ。
そんなお父さんにお母さんはちょっと困った顔で、お腹が痛くなっちゃうかもしれないよ? って言ったんだけど……。
「おっ、完熟してないやつも意外と美味しいじゃないか」
「えっ! ほんと?」
ところが、皮をむいて一口食べたお父さんがこんなこと言いだしたもんだから、僕たちはみんなびっくりしちゃったんだよね。
だって僕とレーア姉ちゃんが採ったベニオウの実はまだ半分くらいしか赤くなってなかったんだもん。
だからみんな、嘘だぁって顔したんだけど、そしたらお父さんが食べてみたら解るって言うんだよ?
でも、もし食べておいしく無かったらやだよね?
と言うわけで、お母さんが僕たちが採った山からベニオウの実を一つだけ採って、持ってたナイフを使って8つに切ると、それを僕たちに渡してくれたんだ。
そのベニオウの実はとっても柔らかかったさっきまで食べてたのと違ってリンゴみたいに硬かったもんだから、みんな恐る恐るかじってみたんだよね。
「っ!?」
「ほんとだ! これ、おいしい」
「うん!、なんか違う果物みたい」
ところが、食べてみるとその硬さがコリコリとした食感になってるし、おまけに完熟したものと違ってほんの少しだけ酸味もあったもんだから、レーア姉ちゃんが言ったみたいに別の果物を食べてるみたいなおいしさがあったんだよね。
これにはみんな大喜び。
確かに完熟したベニオウの実はとってもおいしかったけど、これを食べてみると僕たちもお父さんと一緒で、ちょっとだけあの甘さに飽きて来てた事が解ったんだ。
でもこのちょっと酸っぱい実を食べた事で口の中の味がちょっと変わったもんだから、完熟したベニオウの実も最初に食べた時とおんなじようにおいしく感じるようになったからね。
でもさ、この事で一つ問題が出てきちゃったんだよ。
「どうしよう? これをお土産に持って行ったら、このまま食べちゃうよね?」
「こんなにおいしいんだもん。甘くなるまで待てないよ」
僕が思わず言った事にキャリーナ姉ちゃんがお返事してくれた通り、このまだ赤くなってないベニオウの実はその状態でもすっごくおいしいんだよね。
だからこれをお土産にしても、ロルフさんたちはさっき食べたみたいなとっても甘くて柔らかいベニオウの実になるまで取っとかないと思うんだ。
でもさ、この木になってる実は同じベニオウの実でも入口で採れるもんトは全然違うもんなんだよね。
だから僕、この真っ赤になった実もロルフさんたちに食べてもらいたいんだよね。
「う〜ん。何とか持ってけないかなぁ?」
「え〜でも、持っただけで皮が破れちゃうんだよ? どうやってもってくの?」
キャリーナ姉ちゃんの言う通り、ここの木になってるベニオウの実はパンパンで、おててに持って帰ろうと思ったって、絶対途中でぐちゃぐちゃになっちゃうと思うんだよね。
でもでも、どっちもおいしいんだから、両方持ってかないと!
僕は真っ赤なベニオウの実とまだ半分しか赤くないベニオウの実を交互に食べながら、何とか持って帰る方法が無いかなぁって一生懸命考えたんだ。
現実にあるベニオウの実に似た果物である桃って、実は完熟する前のまだ硬い状態だとまた違ったおいしさがあるんですよね。
私が住んでいる愛知県ではそれほど有名ではありませんが桃も作っているんですよ。
そのおかげでまだ硬い桃を箱買いして最初の内は固いものを、そしてしばらくたってからは追熟して甘く柔らかくなったものを毎年食べています。
でも今年はコロナの事もあるし、無事食べられるかなぁ? とりあえず作中のルディーン君たちのようにしっかりと手洗いをして、体調だけは万全にしておかないといけませんねw